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黒曜石の二分割に成功 [石器作り]

 以前、旧石器時代にも縄文時代にも存在し無いが、「タガネ」で敲いて分割する事が可能かどうかを知りたくて、板状の原石にサンダーに砥石を付けて溝を彫り、その溝に倣って全周を「タガネ」で敲く方法で分割を試みた事がある、その時は強く敲いたため、全ての箇所にヘルツの円錐が発生して、割れというより砕けて失敗した。

 今回、板状の原石(長さ17㎝×幅15㎝×厚さ5㎝)が、大き過ぎ2分割する必要があり、前回の失敗から、溝を深く彫ってから「タガネ」で敲く事にした。

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用意したもの: サンダー ・ダイヤモンドホイール ・タガネ(農具のクサビ) ・ハンマー(百均製)

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まずマジックで分割する位置に線を引き、タイヤモンドホイールで深さ6㎜~7㎜全周に溝を彫る。感触は、ホイールの凹凸面で細かく敲いているような感じで、削るというより細かく砕いているようであった。

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「タガネ」を中心部に当てて極めて軽く敲いたところ一発で見事に割れた。
タガネを調べたが全く痕跡はなかった。

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破断面に発生点の特徴であるヘルツの円錐(バルブ)が見られない。
これが「クサビ」の原理による破壊。つまり、先端で敲くではなく、両側に押し広げる事による破壊かも知れない。

尚、割れてから嬉しくなってカメラに収めたので、経過の写真がない。また、2個とも加工したためこの姿はもうない。

黒曜石加工用のハンマー [石器作り]

 3月の地質講座の折り、黒曜石加工用ハンマーとして大変気に入っている石を先生に観て頂き、「輝石安山岩」であると教えて頂いた。
 大辞泉に「輝石を斑晶として含む安山岩。日本で最も普通の火山岩。」とあるように、上流に安山岩の山があればどこの川でも拾える石のようである。

 しかし、「輝石安山岩」であればどんな石でもハンマーとして使えるわけではなく、黒曜石の加工に適した、大きさ・重さ・硬さはもちろんのこと、敲打部の形状(半球)とグリップ感が重要で、角張り過ぎても、摩滅しすぎても使用できないため、ある硬さを持つ石が、母岩から離れ、石がぶつかり合い理想的な形に摩滅するまでの距離が必用になる。

 八ヶ岳西麓を探し歩いた結果、諏訪湖に流れ込む、御柱で有名な「宮川」の「川越し」に行けばハンマーに使える石が拾えることがわかった。

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2010年4月に行われた諏訪大社の御柱、宮川の「川越し」

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観客のいない宮川の「川越し」

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「川越し」の石は、石器の加工用に適した丸みのある石が多い。しかし、輝石安山岩で形がよく自分の手にフイットする石は、1時間探しても1個か2個である。

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輝石安山岩でスベスベ感が有り、角張った感じを残した半球面のある石がハンマーに適している。本来「輝石安山岩」はねずみ色のはずであるが、なぜか、ハンマーに適している石は、表面が淡い鉄サビ色である。

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破断面に黒い輝石が見える。

石鏃用原石の選別(2)  [石器作り]

 親指人差し指の四角

石鏃を作りながら、縄文人は石鏃を作ることのできる大きさをどのように説明したか。また、自分が説明する場合どんな方法があるか、物差しを用いない、いわゆる「身体尺」を色々考えた。
 初めは、ピンポン玉が石鏃を作ることのできる原石の大きさに近いことから、ピンポン玉を握った時にできる「円」とする方法を思いついた。

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 <ピンポン球を握った円>

 ピンポン玉の円周は、38㎜×3.14≒120㎜(注1)、この数字は、山科哲氏が指摘した、長さと幅が30㎜以上であること、つまり(長さ30㎜+幅30㎜)×2=全辺の長さが120㎜以上であることという条件と一致する。

 しかし、ピンポン玉を握らずに、親指の先端と人差し指の先端を合わせると、円ではなく長四角ができることに気づき、「親指と人差し指で作る四角形」略して「親指と人差し指の四角」を「身体尺」とすることにした。

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<親指と人差し指の四角>

 私が、親指と人差し指で出来る四角形の大きさは、長寸35㎜×短寸25㎜であり、トータルの長さは、(35㎜+25㎜)×2=120㎜となり、ピンポン玉の円周と同じになる。 これは、右手でも左手でも同じである。
 但し、計算上120㎜を超えても、角が飛び出しているものや細長い原石のように、指の間に隙間が見える石は加工が難しくNGである。

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<加工可能とする大きさの原石>

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<隙間が見えるNGの原石>

 これで、石鏃用原石の選別基準は、(A)不純物や斑晶が無いこと。(B)亀裂が無いこと。(C)「親指と人差し指の四角」をクリヤーすること。の3つの具体的な条件がそろった。

 

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石鏃用原石の選別(1) [石器作り]

原石の採取(取得)から石鏃作りは始まる。この時、原石であれば何でも良いわけではなく、石鏃用の剥片加工に適する原石と、適さない原石を選別して、採取(取得)しないと無駄が多くなる。

黒曜石の場合、原石の条件は、(A)不純物や斑晶が無いこと。(B)亀裂が無いこと。(C)小さ過ぎないこと。などがある。この中で(A)と(B)は誰でも同じように選別できる。しかし、(C)の小さ過ぎないという条件は、感覚的には理解できるが、具体性がなく選別基準として使えない。 そこで、石鏃用の剥片を作りながら、選別の基準を具体的に表す方法として、「親指と人差し指で四角形を作り、その穴から落ちない原石を良品とする方法」を思いついた。しかし、これも個人差があり、より具体的な数字が必要であると考えていた。

数字で表す計測法を体験 
 本年3月に開かれた「黒曜石ミュージアム」の例会で、原石の、長さ、幅、厚さと重量の計測を体験した。
それは、山科哲氏が「移動と流通の縄文社会史」(雄山閣)「霧ヶ峰黒曜石原産地における黒曜石採掘と流通」の(2)「採掘された黒曜石の選別と石器製作」の中で原石のサイズを比較する方法として、[長さ+幅]・厚さ・重量を用いて分析しておられるが、それと同じ比較法の基礎データーとなる数字であった。

原石の採取の目的
 この、長さと幅を計測して足す方法を、「親指と人差し指の四角形」に応用すれば、具体的な数字で表すことができるのではないかと考えた。そこで、①実際に原石を採取して、長さ、幅、厚さ、重さ、質、形状のデーターを作る。②どの大きさの原石から石鏃用の剥片を作ることができるか予測する。③実際に石鏃用の剥片を取る。④石鏃を作り完成品を何個作ることができるか、調べることにした。

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<手前の川が砥川、正面の急坂が木落とし坂>

原石の採取とその結果
 採取場所として、「木落とし坂」の直下の「砥川」、黒曜石の原産地「和田峠」から約6㎞下流、昨年の御柱の観覧席として整備した川辺の、長さ約300m、幅2~3mの範囲を選んだ。 所要時間は、約一時間。 総数34個。 総重量は、約730g。

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<最大の原石 長さ75㎜×幅60㎜×厚さ35㎜・重さ184gであった>

重量順に並べる
初めに、重量でのグループ分を試みた結果、下記のように分類できた。
 Ⅰ群 (100g以上) = 1個
 Ⅱ群 (50~99g) = 0個
 Ⅲ群 (20~49g) = 9個
 Ⅳ群 (10~19g) =11個
 Ⅴ群  ( 9g以下) =13個
 しかし、重量の順に並べたところ、石鏃用の剥片として必要な平面が足りない、球形に近い形でも上位に分類されるという不都合があり、分類法として不適当であることがわかった。

[長さ+幅]×2で並べる
山科氏の考え方をお借りして、原石が最も安定する面を下面として置き、真上から見たときの、長さと幅を計測し、[長さ+幅]×2、つまり、長辺を長さ、短辺を幅とした長方形の辺の全長で、4群に分けてみた。

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 Ⅰ群 (200㎜以上)    1個
 Ⅱ群 (120~199㎜) 10個
 Ⅲ群 (100~119㎜)  8個
 Ⅳ群 (99㎜以下)    15個
 
 34個並べた結果、Ⅰ群とⅡ群が石鏃用の原石として使用できると思われる大きさとなり、「親指と人差し指の四角形」の判定法に会うのではないかとの感触をえた。次回その(2)としてこの判定法をまとめてみたい。


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下呂石で尖頭器を作る(3) 荒剥ぎまでのまとめ [石器作り]

神子柴の尖頭器が、黒曜石より壊れやすく、しかも、剥離加工の障害となる「石目」のある下呂石で、なぜ、薄くて長い尖頭器を作る事が出来たのかについて、下呂石を敲きながら、①として、下呂石の中にある「石目」の層が緩衝材となり、下呂石を「強靭」にしているのではないか。 ②として、「石目」の特性を、折損防止として利用するため、図1の緑の線のように、長軸方向に使い、剥離の障害を最小にするため最短距離で通過するよう計画的に加工した事によって、薄くて長い尖頭器を作る事ができたのではないかと考えた。
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①「石目」が下呂石を強靭にしたのではないか。

黒曜石は粘りがある。 黒曜石は、下呂石に比べ、わずかであるが弾力性があり、打撃して、割り取れない場合、打撃部にヘルツの円錐による割れが発生する。しかし、ヘルツの円錐は、圧子(ハンマーの先端径)の径の約3倍までしか亀裂は入らないといわれ、それ以上深くはならない。また、尖頭器のような細長い石器を作る時、先端を打撃すると、「むち打ち現象」によって、中央部から折損する事故が多々発生する。
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下呂石は硬く亀裂が入りやすい。下呂石は、黒曜石に比べて硬く、打撃して、割り取れない場合、ヘルツの円錐の発生は少なく、奥深くまで亀裂が入り、後工程での破損の原因となる。また、黒曜石では考えられないような肉厚な部分でも、敲けば亀裂が発生したり割れたりする。この性質を利用して、厚い剥片を加工する手段として使っている。

硬い下呂石が強靭であるという矛盾。 「石目」を意識して下呂石を敲き、思いの外、加工の衝撃に強く、剥離して薄くなっても「むち打ち現象」による折損が起きにくい。普通、「硬い石は、薄くなると破損しやすい」が常識であるが、この矛盾した現象をどう理解すれば良いか。

「石目」が衝撃を吸収している? ヒントとして、昔から、西洋の刀より日本の刀の方が折れにくいと言われている。その理由は、西洋の刀は鉄を完全に溶かした「塊」を伸ばして形作られているのに対して、日本刀は、鉄を溶かした小さな塊を、折り返しながら「わかしづぎ」という鍛接法で形作られた「積層構造」であるから強いと説明されている。この例と同じ様に、黒曜石が「塊」であることに対して、下呂石は、長石が多い「石目」が重なった「積層構造」となっており、この「石目」が衝撃を吸収する役目と柔軟性を出していることに加えて、弱い物(長石の石目)が、強い物(下呂石)を破壊しにくいという原理も働いているのではないか。つまり、他の石材には無い、下呂石と石目の絶妙なバランスが「強靭性」を作り出しているのではないかと考えた。

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下呂石で尖頭器を作る(2) [石器作り]

下呂石は、99年に初めて敲いたが、その時に作った石器(?)や剥片と、今年(11)作った石器や剥片と比較して、石を割る原理と「石目」を乗り越えて剥離するテクニックを会得する事の重要性を改めて感じた。

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左が今年(11)、右が99年に作った物を並べた写真、左が厚さ1㎝、右が厚さ1.3㎝である。

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上の列が99年に加工した下呂石の剥片3枚。下の列が今年(11)に加工した下呂石の剥片3枚。

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上列の99年の剥片のアップ、大きく剥ぐ方法がわからないまま敲いた、偶然大きな剥片が取れたもの。打撃部が潰れバルブが見えない。

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下列の今年(11)の剥片、大きく剥ぐ方法が少しわかり、小さなバルブで大きな剥片が取れた。

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下呂石を、初めて敲いた99年の石器。剥片剥離の知恵と、石目を全く知らず敲いた結果、「コロン」したものしかできなかった。今見ると、加工ではなく、石を壊したに近い。

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今年(11)作った尖頭器と加工途中の物(中央)。ステップの発生も見られるが、一応剥離されている。


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神子柴の下呂石製尖頭器の「石目」を観る [石器作り]

神子柴の尖頭器をはじめて観たのは、長野歴史館で04年に開かれた「神子柴遺跡の石器群」の特別展であった。石器の姿が良く、中でも、薄くて大きい下呂石の尖頭器に魅了された。しかし、石器を見る目も知識も無く(今も)それ以上の観察はできなかった。

神子柴の尖頭器をていねいに観たのは、04年に開かれた、長野県考古学会のシンポジュームの2日目、上伊那郷土館で行われた「神子柴遺跡石器見学会」の会場。この時は至近距離で観察できた。しかし、黒曜石の尖頭器などすばらしい石器が多く、下呂石製の尖頭器は、石目らしき縞模様があることがわかった程度であった。

「石目」を意識して観たのは、伊那市創造館が10年7月オープンして、見学したことをきっかけに、下呂石の尖頭器を作ろうと、下呂石を加工して、「石目」の無い黒曜石と違って、「石目」を意識することが下呂石の尖頭器を作る上で極めて重要であることがわかってからである。

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創造館のオープン時にはまだ、「石目」を意識していなかった事から、「石目」がはっきり見える写真が無かった。そこで、再度、「伊那市創造」に行き、「石目」を中心にした写真を撮った。ガラス越しの撮影は、気に入ったアングルに邪魔なライトが映り込む事が多く悩むが。創造館は、「石目」を撮影するに好都合の照明で、「石目」の綺麗な写真が何枚か撮れた。

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 最長の尖頭器「№18」(長さ25㎝・幅4.95㎝・厚さ1.35㎝)は、石目はかすかに見える程度でハッキリしない。下の写真のように、角度を変えてもはっきりわからない。

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「№21」の尖頭器(長さ16.45㎝・幅4.7㎝・厚さ1.2㎝)は、「石目」が等高線の縞模様となってハッキリ見える。
 普通、「石目」が平らで間隔が均一な石材を用いて、「石目」を中心に対称に加工すれば、左右対照のキレイな縞模様としてあらわれるはずである。
 写真を、上側と下側に分けて細かく観ると、上側は、石器の平面形に並ぶように、「石目」がみえ間隔が広い。下側は、石目の間隔が狭く、中央を少し超えた所から「石目」が消えており、上下がアンバランスである。
実測すればすぐにわかる事であるが、この理由として、①石目に対して石器が傾いて作られている。②加工面の凹凸で非対称になっている。もあるが、マグマの流れで石目が決まるため、③として、「石目」そのものが平行でない可能性が最も高いのではないかと想像している。 

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下呂石で尖頭器を作る(1) [石器作り]

厚い「荒割剥片」を、最大の長さを残していかに薄く加工するかに挑戦してみた。

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写真に見える面は、原石から石工のハンマーで、割り取った時の破断面で、極端に薄い箇所が一か所ある。破断面に続く急角度の面が側面となっており、裏面は、平らな「石目の面」である。
大きさは、最長25㎝×最大幅15㎝×最大厚さ5㎝・重さ2.5㎏。

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石目の面にロー石で、最長となる平面形の加工のプランを書く。

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側面に、マジックで、残す「石目」のラインを決める。

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薄く作る事を目標に、石のハンマーでの荒剥ぎから始め、鹿角で荒仕上げ、仕上げと進め、これ以上無理と思われるところまで加工し、長さ24㎝×幅5cm×厚さ2.5cm、重さ300gの尖頭器となった。
大きさは、確保できたものの、薄くする事が出来ず、結果はNGである。厚い荒割剥片からの加工は無理かもしれない。

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大きさを比較するため、神子柴の報告書発行のお知らせに上に置いてみた。

次は、伊那市創造館蔵にある、重要文化財「神子柴の尖頭器」の「石目」についてまとめたい。

黒曜石・下呂石・サヌカイトと「石目」(4) [石器作り]

 サヌカイトの加工は、2001年、二上山博物館を見学した時に買った、剥片二枚と、今回、サヌカイトと下呂石の「石目」の比較を目的に入手した、四国の原石の2回と少ない。石器の素材としての販売が無く、手に入りにくかったことが大きな理由である。同じ産地の原石でも性質が異なる場合が多く、2個や3個で結論めいた事は言えないが、これまでに気づいたことをまとめてみた。

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 上の写真は、今回入手した四国のサヌカイトで、見えている面は、一部、剥離され、裏面も石目にそって割り取られており、はじめから石目がわかっている原石である。

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 入手した原石を大切に使うため、タガネを用いて、2枚に割る事ことにした。実は、タガネで敲くとどうなるかは、同じ条件で原石はどのように割れるかを見るため、変形の少ない工具として鋼鉄製のタガネと鉄のハンマーを使って実験している。黒曜石をこの方法で敲くと、タガネで敲いた箇所にヘルツの円錐が連続して出来ただけで、二つに割る事はできなかった。下呂石は、黒曜石より衝撃に弱く割れやすいため、剥片は取れたが大きく割ることは出来なかった。しかも、内部に亀裂が入り、後の剥離加工でその亀裂から破壊したという苦い経験があり、不安な部分はあった。

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 物は試しと、タガネを中央部に当て、石目の面に対して平行に、少しつ強めに敲いたところ、一発で、ものの見事に割れ、サヌカイトの石目の働きに感動した。

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 サヌカイトは表面に、冷えて固まる時にできた円形の窪みが、石目の方向に細長く潰れている事でわかるくらいで、破断面には全く見えず、水を着けても表れない。

 

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黒曜石・下呂石・サヌカイトと「石目」(3) [石器作り]

 下呂石は「石目」が石器作りに重要な働きをすることを教えてくれた石である。

 「下呂石」と小川石」 下呂市の湯ヶ峰山には、「湯ヶ峰流紋岩」と呼ばれ、同じ成分の石であるが、火山ガスが発泡してガラス化していない「小川石」と、発泡が無くガラス化した、「下呂石」、岩石名「ガラス質黒雲母流紋岩」の二者がある。また、「小川石」は、昔から、石垣、庭石、墓石に利用されてきたが、「下呂石」は、硬いだけの石で,全く利用されていないと、地元の人に聞いたことがある。
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下呂石の「石目」 下呂石には、①極めて割れ易い灰色(ピンク)の層。②割れにくい黒い層③割れ易い白い層。という3種類の層がある。 ①は、下呂石の間に挟まれている流紋岩の薄い灰色からピンクの層で、完全に目視できる。この層は、衝撃に弱いため、母岩から落下した時や、敲いた時に剥離し、上の写真のように、流紋岩が付着した平らな面となって現れる。 ②は、下呂石そのもので黒い。 ③は、風化した面には白い層として見えるが、新しい破断面は見ることが難しい。しかし、強く敲くとこの線に沿って平らな面が現れる。溶岩の流れによって、何かが集まっているに違いないと、ルーペで観察したところ、肉眼で見えた層が全く見えなくなった。これ以上、素人では無理とあきらめ、他の事を調べるため、「新版 下呂石物語」を開いたところ、14頁に「下呂石を顕微鏡で見ると、黒雲母や長石、石英などが平行に並んでいる様子がわかります。溶岩が流れてこのような模様が出来ました。長石は白色なので、表面が少し風化すると、長石の部分は白い縞模様となって現れます。」と、岩田修氏が書かれた一文があり、長石が風化した線であると理解した。

 下呂石の石目は水に濡らすとわかる 色々工夫した結果、「破断面を水で濡らすと、「石目」が現れ乾燥すると消える」ことがわかった。これは水が乱反射を防止するためであると推測した。簡単なことであるが、下呂石は「石目」を意識しないと上手く加工できない事から、「水に濡らして石目を確認する方法」は、重要なテクニックの一つとなる。

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上の写真は、石目と加圧方向の関係で「全ての面から斜め方向」の約45°から割れた面で、手前の「石目」に連動するように斜面が波打った極端な例である。尚、この石は、石目そのものがうねっており、破断面にこのような面が現れる石は、石器には不向きである。また、実際の加工は、急角度の場合、厚く割り取ることが多いためうねりは小さくなる。
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上の写真は、下呂石が溶岩であった事を示す、固まる時に出来た亀裂であり、破断面のうねりはこの影響を受けているかもしれない。

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