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黒曜石・下呂石・サヌカイトと「石目」(2) [石器作り]

 黒曜石は、溶岩が火道に入って固まる時、ゆっくり冷えた部分が流紋岩、急に冷えた部分が黒曜石、その中間に両方が混じった部分ができるため、大きく見ると「石目」はある。また、火道から流れ出して固まった場合も、流理構造という「石目」ができる。 黒曜石の加工では「石目」は無縁に近かったとしたが、使っていた、白滝産の黒曜石は、黒曜石の部分が厚く、全く「石目」のない、大きな原石を加工できたからである。 信州には、和田峠・霧ヶ峰・鷹山・麦草峠・冷山等の原産地があるが、下の写真のように、石目や不純物混じる黒曜石が多く、旧石器人や縄文人は、小形で良質な原石を選び出して石器を加工している。 
 
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上の写真は、尖石縄文考古館の玄関前に置かれている高さ70㎝、幅1mの黒曜石である。茅野市の原産地である「冷山」から運ばれたもので、マグマが流れながら、流紋岩と黒曜石になったため「流理構造」と言われる「石目」と、球顆などが混じり、石器の加工には向かない、粗悪な黒曜石である。

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 上の写真は、「冷山」の原石で、黒曜石と、流紋岩の粒が層になっている。

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上の写真は、麦草峠の黒曜石。「冷山」の黒曜石と同様に、「流理構造」という「石目」があり、黒曜石に挟まれた流紋岩(ピンク色の部分)が、粘土化して、黒曜石が板状に剥がれ落ちたものと説明を受けたことが有る。 
 「冷山」の下、「逆川」の縁にある「渋川遺跡」の旧石器人は、黒く良質な板状の原石を、石目の加圧方向④の、石目の面に対して直角方向に加工した、みごに加工している。

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上の写真は、和田峠の黒曜石で、白いぽつぽつの線と縞模様が見える。両方ともマグマの流れで作られた「石目」であると思われるが、白い流紋岩の粒が多い場合はこの線から割れて石器作りができない。しかし、縞模様は、強度に問題は無く石器作りが可能である。

 尚、茅野駅のプラットホームにも 「冷山」の大きな黒曜石が置かれている。

 次は、「下呂石の石目」をまとめてみたい。

黒曜石・下呂石・サヌカイト・石目(1) [石器作り]

 黒曜石を主として敲いていたため「石目」とは無縁に近かった。神子柴の尖頭器作りで、「下呂石」を敲いて、「石目」が石器の加工に重要な役割をしていることを知り、「サヌカイト」も手に入れて、比較したことについて、「石目」・「黒曜石」・「下呂石」・「サヌカイト」の順でまとめてみたい。

「石目」とは何か 「石の目」と、インターネットで検索したところ、「石の目に一致する情報は見つかりませんでした。」と表示され、キーワード候補の「石目」を、クリックすると、「節理や地層の走向などのために岩石の裂けやすい方向。石工が岩を割る時に利用する」(日本国語大辞典)とあった。後日、図書館に行き、「広辞苑」・「大辞泉」・「大辞林」の三冊を調べたが、「石の目」は無く、今後、「石目」を用いることに決めた。また、他の資料も参考にして、「石目」とは、割れにくい石の中に存在する、割れやすい(裂け易い)層であり、「石目」が発生する原因は多様であると理解した。

「石の面」を表す用語 石器の加工にとって重要な、「石目」と「石の面」の関係を表す用語を調べた。その結果、面を表す用語として、「一番・二番・重ね」、「1の目・2の目・3の目」、「順目・逆目」、「女面・男面」の組み合わせがあり、「割れやすい面」・「次に割れやすい面」・「割れにくい面」などの説明文が付いていたが、手元にある石と、石の面との関係がよく理解できなかった。
 

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作りたい石器 [石器作り]

 「そっくりな石鏃を作りたい」が、石器作りを始めた動機であり、今でも最終目標である。
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  目標の中には、時代と形状による技術の違い、石材と加工技術の関係、原産地からの距離による技術の違いなど盛りだくさんで、早く取り掛からなければ、持ち時計間(命)が足りなくなる心配があり、馬車馬のように、脇が見えないようにして、石鏃作りに早く戻りたいと考えている。

 しかし、すごいと思った物に手を出したがる悪癖があり、北海道の、遠軽町の博物館で見た、大型の尖頭器に魅了されて原石を手に入れた都合上、これに挑戦しなければならない。その上、長野県考古学会の折と歴博の特別展で見てすごいと思った、重要文化財の神子柴遺跡の石器の「調査報告書」が出版されて買い求め、さらに、「昨年オープンした「伊那市創造館」に常設展示されて、さっそく見学に行き、赤い布の上に置かれた、下呂石の「尖頭器」をじっくり観ているうちに、生きている間に、どうしてもこれに「そっくりな物を作りたい」との思いが増してしまった。

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 神子柴の尖頭器を作る技術は、とうてい手の届かない所の物であることは百も承知している、しかし、夢は大きく持つ方が良いと自分に言い聞かせて、持ち時間は気になるが、下呂石の原石を入手し敲き始めてしまった。

 
 参考までに 伊那市創造館に、展示してある重要文化財の石器は、どれをとっても、加工技術のレベルは最高。
 場所は少しわかりにくいが、伊那駅から徒歩でも良く、近くに行かれた時ぜひ立ち寄られる事をお勧めしたい。
  電話:0265-72-6220

白滝の黒い黒曜石 [石器作り]

 黒色で、重さ21㎏、長さ50㎝、幅20㎝、高さ25㎝の三角錐型の黒曜石が我が家にある。
 一昨年北海道に行ったとき、これなら敲けると思い、手に入れたものである。しかし、まだこれを敲く気にはなれないし、これからもならないかも知れない。 尚、白滝では小型の原石に入るが、乗用車に乗せることのできる限界と思いこれを選んだ。
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 10年ほど前、遠軽町の博物館を見学するまでは、黒曜石は黒が最高である。黒でなければならないの神話があり、黒曜石の石器は全て黒い物と思い込んでいた。しかし、展示してある石器に黒と梨肌も少し有ったが概ね茶色、何故黒ではないのだろうか、との思いをずっと引きずっていた。

 下の写真は、その後に敲いた白滝産の剥片である。(花十勝は敲いたことがない)
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 左から、黒色、黒茶混じり、茶色、花十勝である。色の組み合わせは、黒色のマグマと茶色のマグマあり、両者が混じりあって黒茶の中間が生まれたと想像している。なお、梨肌もあるが、この系統とは生まれ方が異なると考えて外した。
 敲いた3種類の感触
 まず、黒色は光沢と粘りがあり仕上がると実に綺麗な石器ができる。しかし黒くなればなるほど、大きな球顆が潜む確率が高い。厚い時ならば排除する手段もあるが、薄くなってから現れると対処の方法が無い。また、球顆が抜け落ちた穴は脆弱な部分となり、しかも、球顆を取り囲む周囲は、他に比して硬く、この部分から折損する危険をはらむ。写真の球顆の直径は約2㎝で、大型石器の仕上がりの厚さに近い。
 次に茶色の黒曜石は、黒に比べて柔らかく球顆はほとんど無いが、結合度が悪く白い線のような切れ目が見える石が多い。
 これに対して、中間の黒茶の石は、ある程度、硬く粘りもあり球顆の心配も少なく大型の石器を作る事に最も適している。ただし、黒い輪郭がはっきりしている石は、黒色と茶の硬さの違いが大きくこれが障害となって上手く剥げない。
 など々、 敲いた経験から、これが、大型の石器は茶色が圧倒的に多い理由ではないかと考えており、我が家の、黒い黒曜石も敲く気になれない理由であるが、どうでしょうか?

黒曜石敲き始め [石器作り]

昨年、大型尖頭器を作るために手に入れた、黒曜石の敲き初めをした。目標は、原石の最大長を残して尖頭器を作ることである。

1.原石の状態 ① 原産地 北海道、白滝産 ② 色 黒色 ③ 重さ 約8㎏ ④ 形状 三辺とも約28㎝の底辺を持ち、高さ13cmの変形三角錐。 ⑤外観の見立て 2辺が直角に近く剥離の手掛かりが少ない。また、球顆が見え、球顆の抜け落ちた跡もあり、内部に球顆が潜んでいる可能性が高い原石である。

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2.加工計画  球顆が見える側の先端に亀裂があり、これを避けて、最も大きな尖頭器を作る事ができる場所として、白線を引いた部分を選択した。

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