神子柴の下呂石製尖頭器の「石目」を観る [石器作り]

神子柴の尖頭器をはじめて観たのは、長野歴史館で04年に開かれた「神子柴遺跡の石器群」の特別展であった。石器の姿が良く、中でも、薄くて大きい下呂石の尖頭器に魅了された。しかし、石器を見る目も知識も無く(今も)それ以上の観察はできなかった。

神子柴の尖頭器をていねいに観たのは、04年に開かれた、長野県考古学会のシンポジュームの2日目、上伊那郷土館で行われた「神子柴遺跡石器見学会」の会場。この時は至近距離で観察できた。しかし、黒曜石の尖頭器などすばらしい石器が多く、下呂石製の尖頭器は、石目らしき縞模様があることがわかった程度であった。

「石目」を意識して観たのは、伊那市創造館が10年7月オープンして、見学したことをきっかけに、下呂石の尖頭器を作ろうと、下呂石を加工して、「石目」の無い黒曜石と違って、「石目」を意識することが下呂石の尖頭器を作る上で極めて重要であることがわかってからである。

DSCF1856 (800x600).jpg

創造館のオープン時にはまだ、「石目」を意識していなかった事から、「石目」がはっきり見える写真が無かった。そこで、再度、「伊那市創造」に行き、「石目」を中心にした写真を撮った。ガラス越しの撮影は、気に入ったアングルに邪魔なライトが映り込む事が多く悩むが。創造館は、「石目」を撮影するに好都合の照明で、「石目」の綺麗な写真が何枚か撮れた。

DSCF2442 (800x600).jpgDSCF2444 (800x600).jpg
 最長の尖頭器「№18」(長さ25㎝・幅4.95㎝・厚さ1.35㎝)は、石目はかすかに見える程度でハッキリしない。下の写真のように、角度を変えてもはっきりわからない。

DSCF2449 (800x600).jpg
「№21」の尖頭器(長さ16.45㎝・幅4.7㎝・厚さ1.2㎝)は、「石目」が等高線の縞模様となってハッキリ見える。
 普通、「石目」が平らで間隔が均一な石材を用いて、「石目」を中心に対称に加工すれば、左右対照のキレイな縞模様としてあらわれるはずである。
 写真を、上側と下側に分けて細かく観ると、上側は、石器の平面形に並ぶように、「石目」がみえ間隔が広い。下側は、石目の間隔が狭く、中央を少し超えた所から「石目」が消えており、上下がアンバランスである。
実測すればすぐにわかる事であるが、この理由として、①石目に対して石器が傾いて作られている。②加工面の凹凸で非対称になっている。もあるが、マグマの流れで石目が決まるため、③として、「石目」そのものが平行でない可能性が最も高いのではないかと想像している。 


DSC02061 (800x600)2.jpg
円内に見える白い線は、荒割で、「石目」に対して斜めに割れた面に偶然現れた石目で、通常の加工では現れない。神子柴の下呂石の尖頭器に「石目」が見えるということは、報告書にもあるように、表面が風化しているという証であると理解した。

ブログの写真では限界があり、「伊那市創造館」で実物を見学される事と、写真や図版も多く、説明もていないな、「神子柴の報告書」をご覧いただくことを、神子柴ファンとしてぜひお勧めしたい。

伊那市創造館 伊那市荒井3520 TEL 0265-72-6220

「神子柴遺跡発掘調査報告書」 神子柴遺跡発掘調査報告書刊行会編  発行所 信毎書籍出版センター

次は、下呂石で尖頭器を作る(2)として、「下呂石を加工するための技術力」をまとめてみたい。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。