石鏃用原石の選別(1) [石器作り]

原石の採取(取得)から石鏃作りは始まる。この時、原石であれば何でも良いわけではなく、石鏃用の剥片加工に適する原石と、適さない原石を選別して、採取(取得)しないと無駄が多くなる。

黒曜石の場合、原石の条件は、(A)不純物や斑晶が無いこと。(B)亀裂が無いこと。(C)小さ過ぎないこと。などがある。この中で(A)と(B)は誰でも同じように選別できる。しかし、(C)の小さ過ぎないという条件は、感覚的には理解できるが、具体性がなく選別基準として使えない。 そこで、石鏃用の剥片を作りながら、選別の基準を具体的に表す方法として、「親指と人差し指で四角形を作り、その穴から落ちない原石を良品とする方法」を思いついた。しかし、これも個人差があり、より具体的な数字が必要であると考えていた。

数字で表す計測法を体験 
 本年3月に開かれた「黒曜石ミュージアム」の例会で、原石の、長さ、幅、厚さと重量の計測を体験した。
それは、山科哲氏が「移動と流通の縄文社会史」(雄山閣)「霧ヶ峰黒曜石原産地における黒曜石採掘と流通」の(2)「採掘された黒曜石の選別と石器製作」の中で原石のサイズを比較する方法として、[長さ+幅]・厚さ・重量を用いて分析しておられるが、それと同じ比較法の基礎データーとなる数字であった。

原石の採取の目的
 この、長さと幅を計測して足す方法を、「親指と人差し指の四角形」に応用すれば、具体的な数字で表すことができるのではないかと考えた。そこで、①実際に原石を採取して、長さ、幅、厚さ、重さ、質、形状のデーターを作る。②どの大きさの原石から石鏃用の剥片を作ることができるか予測する。③実際に石鏃用の剥片を取る。④石鏃を作り完成品を何個作ることができるか、調べることにした。

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<手前の川が砥川、正面の急坂が木落とし坂>

原石の採取とその結果
 採取場所として、「木落とし坂」の直下の「砥川」、黒曜石の原産地「和田峠」から約6㎞下流、昨年の御柱の観覧席として整備した川辺の、長さ約300m、幅2~3mの範囲を選んだ。 所要時間は、約一時間。 総数34個。 総重量は、約730g。

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<最大の原石 長さ75㎜×幅60㎜×厚さ35㎜・重さ184gであった>

重量順に並べる
初めに、重量でのグループ分を試みた結果、下記のように分類できた。
 Ⅰ群 (100g以上) = 1個
 Ⅱ群 (50~99g) = 0個
 Ⅲ群 (20~49g) = 9個
 Ⅳ群 (10~19g) =11個
 Ⅴ群  ( 9g以下) =13個
 しかし、重量の順に並べたところ、石鏃用の剥片として必要な平面が足りない、球形に近い形でも上位に分類されるという不都合があり、分類法として不適当であることがわかった。

[長さ+幅]×2で並べる
山科氏の考え方をお借りして、原石が最も安定する面を下面として置き、真上から見たときの、長さと幅を計測し、[長さ+幅]×2、つまり、長辺を長さ、短辺を幅とした長方形の辺の全長で、4群に分けてみた。

数値別.JPG

 Ⅰ群 (200㎜以上)    1個
 Ⅱ群 (120~199㎜) 10個
 Ⅲ群 (100~119㎜)  8個
 Ⅳ群 (99㎜以下)    15個
 
 34個並べた結果、Ⅰ群とⅡ群が石鏃用の原石として使用できると思われる大きさとなり、「親指と人差し指の四角形」の判定法に会うのではないかとの感触をえた。次回その(2)としてこの判定法をまとめてみたい。


  なお、原石の条件として、(D)有効な打面が有ること。もしくは、打面を作るための大きさに余裕があること。がある、しかし、実際に加工できる人以外には判断できない条件であることから、選別の基準から外した。また、(E)として、大き過ぎる原石も不都合があったのではないかという疑問も残っているが、改めて考えることにした。
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